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1-2 「なんだ、人間か? 珍しいな」 感動に浸っていると、不意に後ろから低い声がして、飛び上がるほど驚いた。慌てて後ろを振り向き、その正体を確かめて更に驚いた。 ホシオトのすぐ後ろには怖そうなガタイのいい男が立っていた。しかし彼女が驚いたのはそこではない。 「ぎゃあ! え、なにそれコスプレ? ださいからやめた方がいいよおじさん」 「何言ってんだこのガキ。おれはまだ魔法学校6年生だぞ! 来年卒業するからって、一応まだ学生だ! おじさんなわけないだろ撤回しろ! しかもなんだその、こふ…? 意味わからんこと言うな、俺を侮辱しているのか?」 「え……?」 相手の言っている意味が分からなすぎて目が回りそうだ。 なんて? 魔法学校……? 学校の図書館の片隅で埃を被っている分厚い本を思い出す。 「え、なにおじさん。見た目だけじゃなくて頭もやばい感じのひと……?」 「ああ? 」 「な、なんでもない」 睨まれるので慌てて首を振る。 でも、気になるものは気になる。それに、どんなに印象最悪のおじさんであれ、今のホシオトにとっては頼れる存在には変わりない。 「あー、確かによく見たらおじさんのお耳としっぽ、オシャレかもー」 引き攣った笑顔を保ちつつ、本心とは真逆の発言で褒めてみる。 コスプレするほど好きなのだろうか、犬が。 「うん? なんだ、人間のくせに見る目あるな。俺ほど狼らしくイケてるでかい耳と毛並みに艶があるしっぽの持ち主はいない。俺の親父の立派なしっぽとおふくろの自慢の耳がうまく遺伝して生まれたのが、この俺だからな」 ガタイのいい男が誇らしげにぴくぴくと耳を動かししっぽを振る姿は、ホシオト的には正直グロ画像に等しい。 「あ、はい……」 思わず敬語になりつつ目をそらす。 「人間には粗末な耳しか付いてねえし、しかもしっぽもねぇんだもんなぁ。可哀想に。俺みたいに立派な耳としっぽに憧れるのも道理だ。なぁ、お前、腹減ってねぇか?」 「減った!」 明らかにやばい人の誘いなのに、思わず即答してしまう。 「来いよ、ちょうど俺も飯の時間だ。つるつるした可哀想な人間に馳走してやる」 「じゃあ遠慮なく」 妙に偉そうにホシオトを見下してくるのが気に食わないが、食事にありつけるなら助かるのは事実だ。 なにせホシオトにサバイバルの経験なんかない。このまま放り出されても困り果てるだけだ。 「しかし、さっきからおじさんおじさん言うんじゃねぇ、失礼な奴だな。俺にはロベルナという立派な名前がある。そう呼べ。お前は?」 「ホシオト」 「ホシオト。珍しい名だが、綺麗な響きだな」 「……どうも」 コスプレ不審者と普通に会話しているのが不思議だ。というか、流れで名乗ってしまったが、特定とかされないだろうか。偽名でも使えばよかった。
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