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1-4 「いってえ!! てめえ、何しやがる!」 「へ? え、やわらかくて、温かかった……」 「当たり前だろ! いくら気に入ったからって乱暴に触るんじゃねえ!」 「本物なわけ……?」 「当たり前だ! まぁ、立派すぎて偽物にすら見えるのも仕方がない。迷い人なら余計に物珍しいだろう。だけどな! 人様の耳をいきなり引っ張るとはどういう了見だ! ああ?」 「……う、わ、悪かったよ。痛くしてごめん」 「ふん」 本物。なんと。ということは、ここは本物に異世界ということだろうか。だとしたら、ますます早く帰る方法を探さなければ。 機嫌が悪くなったロベルナに、けれど縋るしかないホシオトは必死に訴える。 「耳、乱暴に触ったのは悪かったよ。その、えっとつまり、見たことないくらい……すごかったから、力加減間違えたっていうか。それで、私が異世界から来たっていうなら、帰りたいの! ね、手伝ってくれてもいいでしょ?」 「断る」 「なんで!?」 「俺は迷い人だって知ってたなら絶対飯を食わせたりしなかった。賢者に知恵を授けてもらおうと思っただけだからな。お前の面倒なんか見るつもりはない」 「別に面倒を見ろなんて言ってないでしょ! 東京に、元の世界に帰りたいから手伝ってって言ってるだけ、だいたいそっちが勝手に私を連れてきたんでしょ、責任取って最後まで付き合ってよね!」 「知るかよ、その、とーき?なんて町」 「東京だよ! もう、なんなのこの田舎者!」 「はあ? 田舎者はそっちだろうがよ、小娘!」 「だいたいあんたなんで家も持ってないの! テントで夜を過ごすなんてありえない! ホームレスなわけ?」 「家くらいあるわ! 旅をしているんだから野宿するのは当たり前だろう。おれに文句があるんならとっとと去れ。俺は引き止めねえよ。お前が野垂れ死にしようがその故郷に帰ろうが興味はねえ。そもそも俺がお前を助けてやる義理もねぇしな。ほら、その椀も置いていけ、返せよ」 「うぐ……」 「はん、腹空かして何にもできねえガキが偉そうにすんな」 「……」 ロベルナの挑発にのって立ち去るわけにもいかず、居心地が悪くなり、奪い取られる前に黙々と粗末なスープをかきこむ。 味が薄くて水っぽくて全然美味しくない。得体の知れないむにゅむにゅしたなにかを噛まずに飲み込む。柔らかいものが喉を通過する気味の悪い感覚に顔を歪めると、既にホシオトへの興味を失ったかのように焼き魚を美味そうに頬張るロベルナと目が合った。 「なんだ、まだいたのか。俺のスープに文句あんなら食うな」 「別に何も言ってない」 「ああそう」 沈黙。ぱたぱちと焚き火の爆ぜる音が物珍しい。黙々と魚とスープを腹に押し込む。この男には頼れそうもない。ここが異世界だというのなら……どうすればいいのだろう。オレンジ色の火を眺めながら、心もとなさにしゅんとしてしまう。
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