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2-2 ロベルナという獣人の男は、基本的にすべて自分一人でやってのけた。いつ昼食および休憩を取るのかと思っていたら、荷台に携帯用の干し肉と水で満たされた水筒が嫌そうに投げ入れられた。当の本人は御者台に座ったままさっさと食べ終え、黙々と行く先を見据えている。休憩する気はないらしい。ついでにホシオトと会話する気も。 ホシオトは正直お尻が痛くなって仕方がなかったが、それを伝えるのは音を上げているようで絶対に嫌だった。休憩はあきらめて大人しく肉に噛みついた。まさか普通に食事を分けてくれるとは。絶食を覚悟していたのに。 口と態度は悪いが、そんなに悪い奴じゃないのかも。ホシオトは固い干し肉を噛み切りながら御者台のロベルナの背中を眺めつつ思った。 それからも、短い休憩を取ることはあってもすぐに出発し、ほとんどの時間を馬車は駆け続けた。その歩みが止まったのは、真っ赤な夕日さえ遠い地平に沈み、とっぷり日が暮れた頃だった。 「仕方ねぇ、今日はここまでだ。明日には街に着かねぇといけねぇっていうのに……。明日も休みなく駆けてぎりぎりってとこか……」 御者台からおりてぶつぶつ言いながら、一日頑張った馬を労うように撫でているロベルナを尻目に、ホシオトも荷台からおり、思い切り背伸びをする。一日中居心地の悪い荷台に座っていたのだから、疲労も溜まる。 「おつかれさま、これ、テント」 「ん、ああ」 ロベルナもさすがに疲れたのか、言葉少なにホシオトからテントを受け取り、黙々と設営する。 「私なにすればいい?」 「さっきも言ったろ。なにもしなくていい。俺だけで全部できるからな」 「でも、あんただって疲れてるんでしょ」 「別にこれくらいなんともねぇよ。おら、お前こそ慣れねぇ旅で疲れたんだろ、テント休んでいればいい。自慢じゃないが俺の馬車は乗り心地最悪だからな」 「つ、疲れてはいるけど、私だけ休んでるなんて居心地悪いし」 「うるせぇな。俺は他人と仲良く過ごす気なんてねぇんだよ。大人しくテントで休め。それが嫌ならどこにでも好きなところへ行け」 「……変なの。わかった、じゃあ遠慮なくテント使うから」 「無駄口きく暇があるなら最初からそうしろ」
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