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 小学校で「努」の漢字を初めて習った時、「女の又の力」と心の中で唱えながら覚えた。  子ども心に、「女の又」には、何か「力」を宿している、と解釈した。これは、つまるところ、「出産」を意味していたのでは、と今になって思う。  「女の又」には他に、「怒」がある。  この図式から考えてみると、「女の又の心」なので、ヒステリーから由来したのかもしれない。  ヒステリーは、「子宮」を意味する古典ギリシャ語だから。  こんな具合にあれこれ推測したところで、漢和辞典(「新漢語林」)で調べてみた。  物の見事に外れていた。  「又」は、「股」の「又」ではなく、「手の象形」だとか。  そして、「奴」は、「捕らえられた女性の奴隷」の意味を表すというから驚いた。  数ある女偏の漢字は大半がネガティブな意味だが、「奴」はワースト1、2位を争うだろう。  となると、「努」と「怒」はどうか。  「奴」が「力を尽くして働かされる奴隷」の意味であるのは、両者共通している。  「努」は、「力を付し、つとめる」の意味を表し、  「怒」は、「感情に力をこめる、いかる」の意味を表す。  つまり「努」と「怒」は、もの凄い強い言葉だ。  よって、努力には、血が滲む、という形容が似合う。  軽々と「努力する」と公言するのは、(はばか)られてしまいそうだ。  一方、「怒る」は、奴隷の感情。それは、想像を絶する。  抑えるのが大変なはず。  今度「怒る」時は、昔の奴隷の人々に思いを馳せてみる。  こんな気持ちで、日々を過ごしていたのだろうかと。  冷静に客観視することで、怒りを抑えられる気がする。
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