まさに、青天の霹靂

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「大福、ありがとね、凌ちゃん!」  視線に耐え切れず逃げ出した。  一人がいい、一人でいい、スカッとしたい時に私が向かう先は――。    旧校舎、私たちが入学した時には既に取り壊しが決まっていた建物。  渡り廊下の先にある立入禁止の場所だ。  ある時、帰り際その中に光る何かと目が合ってしまったのだ。  よく見たらキジトラ猫。  え? なんで、猫!? 出られなくなっちゃったとか? 餌はどうしてる? 待って、ほっとけないんだけど!?  と、入り口を探し回ったら一階の旧美術室の窓の建付けが悪くて、小さな猫なら通れそうなぐらい開いていた。  手をかけたら簡単に開いちゃって、ついでだからって侵入したんだよね、と。  それから、この場所は私の憩いの場所となった。  いや、間違い、私だけじゃなくて。 「……チッ」  先客が机をくっつけて、その上に寝ころんでいた。  気持ち良さげな顔で熟睡している。  その傍らにはキジトラのトラ子が寄り添うようにして。  酷いよ、トラ子!!  私だって、いつも餌持ってくるじゃん?!  なのに、いつもそう! 私じゃなくて、トラ子はアイツに懐いている、悔しい!!  思わず漏れ出た心の内に、反応するように低く不機嫌な返事が聞こえた。 「……ざけんな、天音。お前の方が後から来たくせに、舌打ちしてんじゃねえぞ」  あ、起きてた! 「あ、そういえば、二時限目から教室いなかったよね?」 「今頃気づいたのかよ」 「またここで昼寝してたの? 宗丞」 「いつも言うけどな? 朝稽古疲れの回復中だ、昼寝じゃねえわ!」  机の上に起き上がり、面倒くさそうに私を見ている宗丞を。  私も多分同じような顔で見ていた。
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