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「姫、あきらめちゃうつもり?」
「え?」
「天音ちゃんらしくないよ」
「慶寿? 凌ちゃん!!」
塞がりかけていた傷口からの光が少しずつ大きくなる。
「天音、胡桃、絶対に助けるから!!」
宗丞の声が大きくなる。
光の中差し伸べられた三本の手が、私と胡桃ちゃんを引き摺り上げてくれる。
引き上げられる中、ホッとして胡桃ちゃんを見たら。
「ありがとう、天音ちゃん」
初めて出逢った日のように、少しはにかんで優しい笑みをこぼしている胡桃ちゃんに安心して。
私たちは、蛇の体内を抜け出すことができた。
「姫っ! おかえり! 大丈夫?」
慶寿の方がボロボロだった。
キレイな顔なのに、傷ついて泥がこびりついてるくせに。
「天音ちゃん、こわかったよね」
凌ちゃんの方がきっと怖かったはずだ。
だって、苦手なものに、また襲われたんだもん。
宗丞の片腕には、胡桃ちゃんがもたれかかっていた。
疲れ果てて眠っている胡桃ちゃんを支えながら。
「おっせえわ、天音」
ベエッと舌をだし、いつものように憎まれ口を私に叩く。
「これでも、大分急いだんですけど」
私もイーッと鼻柱に皺をよせてから、三人が必死で抑え込んでいる短刀に手を添える。
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