82人が本棚に入れています
本棚に追加
「行くよ、宗丞、慶寿、凌ちゃん!!」
三人を見渡したら笑顔で頷いてくれる。
大丈夫、きっとできる。
四人なら、できるはずだ。
塞がってしまった傷口をもう一度切り裂いていく。
地獄の底から響き渡るような声をあげ、最後の力を振り絞って抗おうとする大蛇に向かい、慶寿は念仏のようなものを唱えながら。
凌ちゃんは、渾身の力を振り絞って抑えつけながら。
宗丞も胡桃ちゃんを守りながら。
私たちは少しずつ、少しずつ、その黒い体を切り割いていく。
山の向こうに朝陽が見えた。
いつの間にか雨が上がっている。
「なあ、あれって、もしかして!」
宗丞の声に慶寿も凌ちゃんも導かれるように顔を上げた。
赤紫に光る雲の間に間に、白く長く揺らめきながら、私たちの頭上までやってきたそれを呆然と見上げた。
「は、く……」
神々しさに、その言葉を口にするのも憚られる気がして、円を描くように優雅に空を泳ぐ幻の白龍様を見上げた。
『あとは、任せなさい。ここからは、わたしの務め。今度こそ復活などできぬように』
そう聞こえた気がするのは私だけじゃなかったみたい。
その声に導かれるように、私たちは大蛇の側を離れる。
白龍様の爪が、黒蛇にかかる。
逃げようとした黒蛇に、白龍様は容赦なく深く爪を食い込ませていく。
強い光の中で蒸発するように黒蛇が消えていくのを見た。
眩い光に目を閉じて、静寂の中恐る恐る開いた先には崩れ落ちた御社。
遠くに白くかすむのは、白龍様なのか、雲だったのか……。
最初のコメントを投稿しよう!