蛟竜、雲雨を得

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「行くよ、宗丞、慶寿、凌ちゃん!!」  三人を見渡したら笑顔で頷いてくれる。  大丈夫、きっとできる。  四人なら、できるはずだ。  塞がってしまった傷口をもう一度切り裂いていく。  地獄の底から響き渡るような声をあげ、最後の力を振り絞って抗おうとする大蛇に向かい、慶寿は念仏のようなものを唱えながら。  凌ちゃんは、渾身の力を振り絞って抑えつけながら。  宗丞も胡桃ちゃんを守りながら。  私たちは少しずつ、少しずつ、その黒い体を切り割いていく。  山の向こうに朝陽が見えた。  いつの間にか雨が上がっている。   「なあ、あれって、もしかして!」  宗丞の声に慶寿も凌ちゃんも導かれるように顔を上げた。  赤紫に光る雲の間に間に、白く長く揺らめきながら、私たちの頭上までやってきたそれを呆然と見上げた。 「は、く……」  神々しさに、その言葉を口にするのも憚られる気がして、円を描くように優雅に空を泳ぐ幻の白龍様を見上げた。 『あとは、任せなさい。ここからは、わたしの務め。今度こそ復活などできぬように』  そう聞こえた気がするのは私だけじゃなかったみたい。  その声に導かれるように、私たちは大蛇の側を離れる。  白龍様の爪が、黒蛇にかかる。  逃げようとした黒蛇に、白龍様は容赦なく深く爪を食い込ませていく。  強い光の中で蒸発するように黒蛇が消えていくのを見た。  眩い光に目を閉じて、静寂の中恐る恐る開いた先には崩れ落ちた御社。  遠くに白くかすむのは、白龍様なのか、雲だったのか……。
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