まさに、青天の霹靂

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「あのさ、宗丞」  トラ子をひと撫でし、出入り口である窓に向かって歩く宗丞を呼び止めた。 「なに?」 「私、誰とも付き合ったりしないよ」  今年の5月、私たちの関係が変わってしまいそうな出来事があった。  5月5日、私の16歳の誕生日に父様から告げられた話。  それはまさに青天の霹靂と呼べる出来事だった。  あまりの驚きに、私は知恵熱が出て卒倒した。  そのせいか、春だと言うのに真夏日並みに気温は上昇して――。 「私が慶寿を選ぶことも、凌ちゃんを選ぶことも、それから……、宗丞を選ぶこともないの。それは、わかってて欲しくて」 「知ってる」  お互いに、目を反らした。  あの日、泣いた私の頭を撫でて、『お前にふさわしいのは慶寿だと思う』って笑ってた。  ちゃんと、覚えてる。 「だったら、もう私と慶寿を、なんて言わないで」  だって慶寿は『大事な仲間』だから――。   「天音、それでも俺は……。俺の気持ちは、あの日お前に言った通り、今も変わってないから」  私を見下ろす宗丞がどんな顔をしているか、直視できずに俯いた。
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