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◇◇◇
私の誕生を祝う会に、東狐家、鬼熊家、狼谷家が勢ぞろいするのは毎年のこと。
けれど、今年は何だかいつもの年よりも仰々しい感じがした。
それぞれがお膳を食べ終わった頃を見計らい、父様が一つ咳ばらいをすると。
私の顔を見ないままで、とんでもないことを言い出した。
「天音、お前ももう16歳だ。昔であれば成人と言われてもおかしくはない年齢となったわけで」
「はい?」
何を言い出すのだろうと正座をしたまま、並んで座る父の横顔を見た。
今年に限って振袖なんか着せられたものだから、膝を崩すこともできないし、さっきから少しずつ足が痺れている。
早く終わってくれないかな、とぼんやり思っていた私の耳に。
「そこでだ、天音。お前には、この中の誰かといずれ結婚をしてもらいたくてだな」
ん? 今、何だか耳慣れない言葉が聞こえた気が、する?
「父様?」
「この国の憲法上、男は18歳にならなければ結婚はできない。だから、それまでは婚約者という形をとってもらうとして」
「父様?」
「なんだ? 話しは最後まで聞きなさい、天音」
「さっきから、一体何の話をしておるのです?」
「だから天音と、慶寿くん、凌牙くん、宗丞くんの内、誰かといずれ結婚をするという話を」
「いたしません、できません、どうして? なんで? そんなこと突然言われても、私もだけど、皆だって納得なんか」
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