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とんでもない冗談を言う、と半笑いを浮かべた私に。
「志龍の姫と呼ばれし歴代のいずれの姫たちも、そうしてきたのだ。姫を守るために存在する東狐家、鬼熊家、狼谷家のいずれかに嫁がねばならぬ。天音、お前には今日まで告げずにきたが、3人は昔から承知のこと。本来ならば順番で行くと、嫁ぎ先は狼谷家となるのだが、ここはお前の意思を尊重して」
皆、私以外、知ってたってこと!?
気付けば慶寿も凌ちゃんも、何もかも知っているような顔で私を見ていた。
宗丞だけは、唇を噛みしめて。
本来ならば、狼谷家。そのプレッシャーのせいかもしれない。
だって、宗丞は慶寿や凌ちゃんとは少し違って。
きっとそんな決め事なんか、最初は知らずに来たんだろうし……。
なんかもう色々ごめん。
結婚なんて、まだ私たち16歳で。
ああ、帯をきつくしめすぎたせいだろうか。
身体中の血の巡りが悪くなってしまったのだろうか。
気持ち悪さにトイレに向かおうとして、立ち上がった瞬間にユラリと視界が揺れた。
驚いたような宗丞の顔だけが、ぼやけた世界でやけにハッキリと映って。
私は、必死に手を差し伸べた。
◇◇◇
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