まさに、青天の霹靂

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「……、宗丞に言われたこと、ずっと覚えてるよ。ちゃんと」  あの日、胸を焦がすような想いに蓋をした。  思い出したら、また捕らわれてしまいそうで、自分の心に封印をした。  珍しくトラ子が、ニャアンと私の足元に擦り寄って来てくれるのは偶然だろうか。  その温かさに救われる気がした。   「先、行くわ」  私の返事に応えることも無く背を向けて、ひょいと身軽に窓枠を飛び越えた宗丞。  この先、私たちは一体どうしたらいいんだろうか。  少しずつ少しずつ変わってしまうような気がして――。  膝を抱えて(うずくま)る私の側でトラ子はじっとその温もりを預けるように寄り添ってくれている。  その優しさに甘え切らないように。  必死に歯を食いしばって、感情を抑え込む。  泣いちゃダメだ。  泣いたりなんかしたならば、皆に心配をかけちゃうもの。  なんて面倒くさい体質だろうか、私の心は鏡のように空に映し出され曝け出される。  中学生の頃から、誰かにからかわれたりするのが嫌で、黄色の瞳に黒いコンタクトを装着するようになった。  こんな風に心を隠せるものがあれば、普通に悩んだり笑ったり、自分の気持ちにもっと素直でいられるのにな――。
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