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小さい頃から、どうもこの刀だけは苦手だった。
側にあると気が重たくなるというか……。
この町の天候を操ることはできても、その他に変わった能力などないはずなのに「これは嫌なもの!」と本能が叫んでいる。
「天音の気持ちが固まったなら、その時にこの刀の謂われを話そうと思う。決して、天音が思うような変な感じのものではないのは確か。むしろ、」
言いかけて満兄さんは口を噤んでしまう。
「なんか余計気になるんだけど」
「そうでしょう?」
クスクスと楽しそうに、まるで私をからかうような笑いを浮かべている。
「え、ちょっと!! 満兄さん!! 言ってよ、気になって仕方ないよ~!!」
「だってね、この先の話は天音とその婚約者にしか伝えられないこととなってるからねえ」
「待って!! じゃあ、私にも教えてくれないってわけ?!」
結子さんが不服そうに口を尖らしている。
「そ、二人にしか伝えられないんだ。それを伝えることが天龍神社の跡目を継いだボクの役目だしね」
つまんない、とブーイングしている結子さん、私はというとやっぱり嫌な気を放っているように感じる刀を見つめて。
「あれを持たなきゃならないなら、やっぱ結婚とか絶対したくな、」
言いかけて満兄さんにまた睨まれたのだった。
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