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「天音ちゃん、開けてー」
昔の夢を見ていた。
母様の夢だ――。
……夢、なんだ。
頬に流れた涙を必死に拭いさる。
目の下あたりの皮膚は、擦りすぎて既に痛い。
「ねえ、開けてってば、天音ちゃん!」
私の部屋のドアノブがガチャガチャと回っている。
このせいで目覚めたのか。
ベッドの上に体育座りをしながら、その光景にため息をつく。
多分、凌ちゃんだ。
止めてよ、人より力が強いんだからドアが壊れちゃうじゃん。
「姫、ご飯持ってきたから、一緒に食べようよ? ね?」
慶寿もいるみたい。
お腹、空いてないもん。もうご飯なんか食べなくたっていいもん。
もし、何か一口だけ度食べれるならば、母様の作ったおはぎが食べたいな。
そう思ったら、また悲しくなって、尚一層心は塞ぎこむ。
「ああ、もう! なんなんだよ、また吹雪いてきたじゃねえか、このバカ女! 全部お前の仕業だろ? まずは、いい加減ここから出てこい、天音!!」
宗丞だ、なに? バカ女って!
うるさい! ホント、うるさい、ほっといてくんない?!
バカっていうあんたの方がバカなんだからっ!!
その瞬間、庭にドーンと雷が落ちるのと、部屋の戸がドンと大きな音を立てて内側に倒れてきたのは同時だった。
雷を落としたのは、私。
でも部屋の戸を開けるマジックみたいな特技なんか持っていない!
ドアの向こうで腕を組み、偉そうに私を睨んでいるのは宗丞だった。
その後ろには、苦笑している慶寿と涙目の凌ちゃん。
「あーあ、宗丞。後で怒られるよ?」
慶寿の言葉でこのドアを壊したのが、宗丞だということがわかった。
あれだ、きっと! 空手だっけ? それで、ドアを蹴破ったんだ!
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