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「勝手に入ってこないで!」
側にあった枕を投げつけると、安々とそれをキャッチした宗丞。
「まだ中には一歩も入ってませんけど~?」
まるで口笛でも鳴らしそうな得意げな顔をして舌を出している。
た、確かにそこは廊下だし、部屋には一歩も、って。
そういう問題じゃない!
「誰にも会いたくないの、帰ってよ、三人とも!」
布団を手繰り寄せ頭から被ろうとしたのに。
「でも、オレは姫に会いたかったけど?」
許可なく私の部屋に入ってきて、布団を取り上げたのは慶寿だった。
同い年なのに、どこか大人っぽい慶寿はにっこりと笑って私の頭を撫でた。
「僕だって会いたかったよ、天音ちゃんに」
涙もろい凌ちゃんは真っ赤な目で私の前に跪く。
小六とは思えないほど、大きな体をしているし力だって強いのに、気弱で優しい凌ちゃんの顔を見たら、釣られてまた泣きそうになる。
「なんなの、お前ら。なんでコイツのことそんな甘やかすわけ?」
そんな二人を見下ろすように立ちはだかった宗丞は、ビシッと私を指さした。
嫌い、本当に嫌い!!
一番付き合いが浅い癖に、いつだってこうして私を責め立てる。
私にとっては天敵のような存在が宗丞だ。
「あのな、お前が悲しいのはわかってんだって。どんだけ悲しいかなんて、この大雪見たらわかるし、だから誰も何も言わないけどな? 言えないけど、わかってやれよ! せっかく伸び始めた田んぼの米や畑の作物は、この雪のせいで今年はもう終わりなんだってさ。そういうの全部わかってて、まだ降らせる気か?」
ぐっと言葉に詰まる私は唇を噛みしめた。
宗丞が何を言いたいかなんて、わかってる、全部わかってる。
何人もの大人が籠城した私の部屋の前でため息を零していた。
どうにか雪を止ませてくれないか、と声に出さずに懇願しているのは、わかっていた。
だけど、ねえ、私は――。
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