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「天音、」
言いかけて壊れたドアを見て絶句している父様に、宗丞は気まずそうに目を反らす。
「ごめんなさい、父様。多分、もうすぐ雪も止むはずで、」
「天音、怒ってるんじゃないんだ、ホラ!! 四人とも、外に出るよ」
父様の言葉に弾かれるように外に出たら、母の葬儀に集まっていた人たちが空を見上げていた。
少しずつ気温が上がってきているようだ。
雪は止み、どの家の軒下でもボタボタと雫が落ちている。
「キレイだね、姫」
空を見上げていた慶寿が微笑んでいる。
「うん、キレイ」
雪雲が去り、澄んだ空気の中で大きな天の川が夜空一杯輝いていた。
「こんなにキレイな星空、見たことないわ」
町の人たちが口々に頷きあって星空に魅入っている。
「はくちょう座ってわかる? 天音ちゃん」
凌ちゃんに教わってそれを探したら、まるで天の川を渡っているみたいに見えて。
「天音の母ちゃんは美人だからさ、あの白鳥になってお前のこと見守ってるかもな」
らしくない言葉を吐いたのが宗丞で驚きのあまり笑ってしまった。
笑った瞬間零れ落ちた涙みたいに、大きな大きな流れ星が一つ、夜空を駆け抜ける。
どうか、天音を見守ってください。
どうか、私の大事な人たちを守ってください。
母様――。
あれからずっとこの町に季節外れの大雪は降っていない。
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