竜殺しの夜➺D3 12/13まで毎日更新

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Dear ナーガさん🌟 こんにちは、サキです! やっとお手紙、書けました! 今、私、橘診療所にいて、これから玖堂(くどう)さんに会いにいきます。 ナーガさんが私を、ディアルスから連れ出してくれたおかげです。 ナナハには悪いけど、私も地球に行きたい。龍斗(りゅうと)達に会いたい。 このお手紙、ここからなら届くって、院長先生が教えてくれました。 これからも見守ってて下さい、ナーガさん! from サキ✿  ふう、と。処置室の長椅子で人間世界の不思議なペンで、念願の報告をサキは書き上げた。万年筆は故郷の王城で見たことがあったが、真っ白な紙という貴重品でもテンションが上がるのに、一本で四色もの字が書ける小さなボールペンはすっかり気に入ってしまった。 「もっと何か書きたいな……そうだ、ラスティにもいい加減連絡しなきゃ!」  現在のようにソロで旅を始める直前まで、一緒に行動していた仲間。養父もそうだが、しばらく音沙汰のないサキを心配しているだろう。  小さくても便利なボールペンが、色んな道具を造る兄貴分を思い出させた。これから来る緊張の時間を紛らわすように、サキは新しい紙を画板に敷いた。 Dear 烙人(ラクト) 烙人、みてみて! 私、ジパング語、こんなに書けるようになったよ! 烙人のジパング名も! 人間界に行きたいから凄くがんばったんだ、えへへ。 え? 何で人間界に行くんだ、って? それは今度会った時に、沢山話すね! だからそれまで生きててね! 烙人の探し人も早く見つかるといいな。見つかったら私にも教えてね? おとーさんにもよろしくね、私は元気だって。 話したいこと、色々あり過ぎるから、会える日を待ってるから! from サキ  よし。ペンを置いて、深呼吸して、診療所で借りた日本の服が歪んでないか鏡の前で確かめる。初冬向きの白いハイネックに、短い赤のスカートが可愛い。兄貴分から一人立ちの直前にもらった、大事な飾りベルトがぴったりと合う。  サキを見つけて、この診療所に行くよう教えてくれた天使以外、今まで誰にも話せなかったことがある。それをこれから、よりによって初対面の人間に話しにいくのだ。 「まずは玖堂さんに、助けてもらえるかどうか。人間界にいられるかどうかはそれが重要だって、ナーガさんも言ってたし」  等身大の細い鏡の中で、もうすぐ十六とはいえ、見た目はただの娘が震える。  人間界。橘診療所という特異点を通じてやってきた星。  そうして人間でないサキが通されたのは、ある富豪の私室だった。
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