『路傍の石は宝石になるか』

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『路傍の石は宝石になるか』

 私は邪魔者だった。  酒浸りの父親に殴られ、母親には要らぬと言われて。逃げ出した先の王都の裏通りで、腹を空かせて蹲り、路傍の石のごとく固まって、あとは緩やかな終わりに身を任せるだけだった時。  その声は、降って来た。 「生きてるのか? 生きてるなら、動け。石じゃあるまいに」  重たい目蓋を持ち上げれば、金髪碧眼の、幼さを残した少年と目が合う。 「お前、死にたいのか?」 「……どうでもいい」  質問に、本音を洩らせば、碧い目が不機嫌に細められて、手が差し出された。 「なら、俺がお前という石を拾う。磨き上げて、宝石みたいな女にしてやる。そして、俺がこの国を変える為の懐刀にしてやる」  それが、我が主と私の、運命の出会いだった。 300文字。 第89回Twitter300字SS様参加作品。お題『石』。 何故か『鎌◯殿の1X人』の某暗殺者少女を思い出しながら書いた、たつみ式主従です。
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