『桃太郎異聞』

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『桃太郎異聞』

 むかしむかしあるところに、などという決まり文句は端折ろう。  おばあさんが川で洗濯をしていたら、上流から流れてきた桃から生まれた赤ん坊、それが私だ。  得体の知れない子供を拾った養い親は、災いを招く者として殺され、居場所を失った私は、流れ流れて鬼ヶ島にたどり着いた。 「おめえは、神に見捨てられた子なんだよ」  ぼろぼろの私を助けて飯を与えてくれた鬼の頭領は、酒をあおぎながら笑った。 「どうだい。ここはひとつ、神に反逆してみねえか」  育ての親も、私も助けてくれなかった生みの親。ならば私はそいつに楯突いてみせよう。  鬼の頭領が見込んだ私は武術を学び、彼亡き後、流れるように跡を継いだ。  さあ、来るがいい、愚かな人間共よ。 300文字。 第90回Twitter300字SS様参加作品。お題『流れる』。 最近、お伽噺を素直に受け取る事ができなくなってしまったのは、もう無邪気な子供ではないという証拠でしょうか……。  
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