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『ナイチンゲール』
野戦病院は阿鼻叫喚だった。
血塗れの兵士達がうずくまり、呻き声をあげている。五体満足なのはまだいい方で、明らかに、あるべき身体の一部を失っている人もいる。
先輩が、横たわる兵士達の合間を器用に縫って、新入り看護師に指示を下してゆく。救える人を優先に。「間に合わない」人は、切り捨てる。
わかっている。そういう場所に、私は自分から道を選んで飛び込んだ。
戦場の天使なんて、そんな可愛らしいものではない。時に残酷な事実を告げる、死告天使。
それでも。
それでも救える命があるはずだと信じ、私は包帯を手に、顔半分が赤く染まった兵の傍らに膝をつく。
「大丈夫。貴方は助かります」
その一言で、こわばった表情が和らいだ。
297文字。
第81回Twitter300字SS様参加作品。お題『救う』。
この物語はフィクションです。
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