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『鮫を飼う』
「ねーえ、この子欲しい! 買って! 買って!」
僕を見つめるつぶらな瞳。
「ダメ! どうせすぐに飽きるし、そんなの買うお金が勿体無いし、気持ち悪い!」
非情に切り捨てる声。
「ごめんね」
今にも涙を溢れさせそうな目で、僕に囁きかける、小さな声。
「大きくなって、自分で働けるようになったら、必ず迎えにくるから」
その言葉を信じて、僕は待ち続けた。長い、長いあいだ。
そして、夢見た日は来た。
「……というわけで」
彼女は鮫のぬいぐるみの僕を抱きしめながら、目の前のニンゲン(カレシ、というらしい)にとうとうと語る。
「毒親から独立したあたしは、やっとこの子をお迎えできたのでした」
276文字。
第86回Twitter300字SS様参加作品。お題『買う』。
どこがとは明言しませんが、ほんの一部、実話が混じっています。
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