深夜の図書館

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ここは、郊外の駅から徒歩5分程のところにある図書館。  最近できた図書館で、円形のドーム型、総ガラス張り3階建てで、建築雑誌にも何度か紹介されているモダンな建物だ。  私、柴咲茉莉は今日で30歳の誕生日を迎えた。ここの図書館で司書として働いている。  同僚のおばさまたちには今日の誕生日のことは話していない、 話したところで年齢は?→彼氏いるの?→結婚は?→生涯未婚でもいいよね、仕事持ってれば 的な話になるのが見えるので、ランチの時にも話題にせず、ほとんど何も話すことなく、本日無事?退勤となった。  私は、ここで働き始めてまだ1年程しか経っていない。 大学を卒業して新卒で一部上場企業に就職して喜んだのもつかの間、 毎日激務で午前様帰宅、生理も止まって、鬱気味になったとき、図書館司書募集の張り紙が目に留まり、すがる思いで応募、採用とあいなった。  給料は半分以下に減ったが、命がなくなるよりはまし。まあ女子にありがちな人生コースかな。  今日はどっか寄ろうかな?小さなケーキでも買って?一人バースデイ。  図書館を後にし、駅に着くとちょうど帰宅ラッシュ時で、めちゃ混みの電車だ。人と人の間の小さな隙間を狙って意を決して乗り込む。  サラリーマン風の人、大勢乗っている。。。  元居た会社、夕方なんて、これからエンジン全開で仕事!って感じだったなあ。今日も相変わらず頑張ってるんだろうな、同期とかグループの同僚とか。。 少し感傷的になる。  あの時の大型バックに書類を詰め込んでヒールはいて電車に乗っていたのが嘘みたいだ。  今の私は、赤毛のアンがマリラの家に引き取られたときみたいに 布製のよれよれカバンに、流行を無視した淡いパステルカラーのざっくりカーディガン、Aラインスカート。ピクニックにでも行くの?お嬢さん?って感じ。
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