誉れ

2/3
前へ
/3ページ
次へ
サル以外の部下も部下である。 お館様により近いはずの古株の部下は、そんなお館様を諌めるでもなく、尻尾を振って媚びてばかり。 この権力の犬め!と、サルは何度も怒鳴りそうになった。 其奴以外にも、いつも忙しそうに飛び回っている古参の部下もいるにはいるが、そいつはそいつでサルとは気が合わず、いつもサルを上から見下してくるので、最近は口も聞いていない。 これは、国の民のためにも自分がやらねばならぬ。 サルは決意した。 お館様と二人だけになれる隙を狙い、お館様をこの手で排除するのだ。 そう決意を固めてから、早や三月。 ようやくその日がやってきた。 お館様が、信頼できる部下であるサルに、秘術を仕込んだ薬丸を与える日が来たのだ。 お館様は、先祖伝来の秘術で拵えた薬丸を飲み込ませて、部下の心を洗脳する。 その薬丸を口にすれば、たちまちお館様への忠誠心が溢れ出し、戦に出ても疲労と恐怖心を忘れることができるシロモノだ。 ただその薬丸は数ヶ月に一度投与しなければ、効果が切れてしまう。 そのことに気づいたサルは、前回その薬丸を飲み込むふりをして、お館様に悟られぬよう吐き出していた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加