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過去からのスタート
さて…… 俺達はいろいろあって2020年以降の世界から1989年に飛ばされてしまった、国は日本、所謂バブル時代だ。
俺の本業は掃除屋のハル、俺と腐れ縁のルノという女の同業者とカズハ、一般人と呼んでいいのか訳ありの梢の3人も俺とこの時代に来ていた。
俺は前居た世界で死んだ、日本の秘密結社ヤタガラスの俺の親父を殺したビャッコと呼ばれるヤタガラスの四神のひとりと闘った。
そしてルノとの共闘の末辛くも勝利したがそこでヤタガラスのトップのミロクにルノ共々殺された。
梢も死にカズハもどうなったかわからなかったがこの世界で俺達と一緒に飛ばされたのは俺が死の淵で繋がりを持ったこの3人のことを強く願ったからだろうか?
しかし俺とルノはこの世界に来てから異変が起こった、身体が若くなっていた。 10代後半くらいに。
まぁそれはいい、俺は今度こそヤタガラスを潰す。
そのためには俺も組織を作る必要がある、下手にヤタガラスに戦いを挑んでも返り討ちにされるのが関の山だ。
◇◇◇
「ハル、東京連合は完全に私達の手中に収めたわ。 表向きはアウトローの集まりだけどね、それで本来の活動に必要な運用資金もバブルなだけにその連中を効率的に利用すれば集まるけど」
「ああ、だが今のままでは組織としての規模も小さい。 もっと他のチームをうちのチームに吸収して大きくする必要があるな。 比較的大きな勢力を誇っているチームをもっと取り込んでいく。 それと警察関係にもツテがあった方がいい」
「お兄ちゃん、警察なんて信用できるの?」
カズハが横から割り込んできた。
「警察なんてものは一般市民には力を振りかざしているが上級国民に対しては殆ど機能していない、警察のトップの連中なんて政治家や国の言いなりだ。 裏ではヤクザとだって蜜月がある、真面目にやっているのなんて末端くらいなものだ、それだけにそいつらは使い物にならないが権力を持っているお偉いさんは使える、だからこっち側に引き込む」
「だとすれば何かしらの弱味を掴んでおく必要があるわね」
「ハル君とルノさんの話している会話が怖い」
梢が俺とルノの話していることを不安そうに聞いていた。
まぁこいつはそう思うだろうけどズル賢くて悪くて汚い奴が得をし生き残るのはこの世の常だ、普通の女子高生だった梢には理解出来ないだろう。
「梢、裏の世界なんてそんなもんなんだ、理想だけで何か出来る世の中じゃないんだ。 やるからには良いことも汚いことも同じくらいやらなきゃいけない、敵が居るなら殺らなきゃ殺られる、殺らなきゃ守れない」
「そんな…… そうなのかもしれないけど普通に生きて普通に生活すれば」
「そういうわけにもいかない」
俺がこの世界に飛ばされたのは四神のひとり、スザクが関係してるとしたら奴も当然俺達がこの世界に来ているのを知っているかもしれない、どういう原理なのかはさっぱりとわからないが。
もしかするとあのスザク自身は違う次元に行ったかもしれないしそうじゃないかもしれない、だがもし俺の前の世界のスザクもここに居たとしたら、そして俺のことも知っていたら必ずミロクにも伝えている。
そうなればいずれ探し出され抹殺されるかもしれない、四神の力は前の世界でよくわかっている。 奴らが本気になれば俺達がいくら強くたって密かに殺すなんて容易い。
だからそうならないための勢力をこちらで用意しなければならない。
「梢ちゃん、これは私達の身の安全を確保するのに必要なことなの。 ハルもそのことを第一に考えてるからそうしてるの」
「でも……」
それから7年が過ぎた、ハル君達はバブルを利用してはじける前に荒稼ぎをしてとてつもない額の資産を築き上げた。
何やら旧財閥をも凌ぐほどのお金があってその手の名だたるグループから危険視されている。 けど一国を買えるほど資産と施設兵団を持ち合わせているハル君達にはいろんな意味で危険視されているみたい。
ほとんどそういうのはルノさんの手腕らしいけど。 ルノさん曰く起こる出来事が大体わかってるから面白いようにお金が湧いて来るって……
でもそのために悪いことも沢山してるみたい、政治家や警視総監を買収したり弱味を握ったりハル君達がやりたい放題出来る様に。
国単位の規模から考えるととても小さな暴力団崩れの集まりだったのが今じゃ施設兵団を抱える程の大組織に…… そして私もそんな良いことをしてるとはいえないハル君達の庇護のもと大豪邸に暮らさせてもらっている。
こんなんでいいのかな? と思うこともあるけど私なんかじゃどうにも出来ないし、ハル君達とは一緒に居たいし。
危険なこととは私は遠ざけられてるみたいでこの豪邸にもハル君達はたまにしか来ない。
確かに欲しい物はなんでも買えて金銭的には困らないけど。 あれ? 私が夢見たことってこんなこと?
「どうされました梢様?」
「あ、ううん。 なんでもないの」
私のメイドとして雇われている飛鳥メイちゃん。 私よりも年下だけどとってもしっかりしている、ハーフっぽい顔立ちでとても美人で。 ハル君とルノさんに直々に頼まれたようで私のことを凄く気にしている。
「メイちゃんそんなに畏まらなくていいよ?」
「いえ、ハル様とルノ様から命を掛けてでも梢様をお守りするようにと言われていますので」
「い、命を掛けてね…… でもそんな命を掛けることなんて滅多にないんだから普段はお気楽してていいよ?」
「はい、梢様の命令もしっかり聞くようにと言われておりますのでそのように言うのであれば」
「じゃあ明日どこかで買い物しない?!」
「いえ、私如きがそんなこと。 畏れ多いです」
いつものパターンだこれ…… というか私ってこんな豪邸に住むような柄じゃなかったから性に合わない。
それにここって半径5、6キロは何もないとこなんだよね、ハル君は安全のためだって言ってたけど安全のためにそこまでしなきゃいけないなんて返ってやってることが安全から程遠くない?
まぁこの屋敷にはメイちゃんも含めていろんな人が維持費とか込みで住み込みで働いてるけど。
「じゃあ今日はメイちゃんの部屋で遊ぼっか?」
「はい?」
刺すような視線で見られた。
うう…… 25近いくせに何言ってんだと思われた? 精神年齢的にはもうおばさんの域に達してるけど。
ん? そういえば確かキリコが前いた世界の記憶は私が生まれ変わった時に薄れてくるって言ってたけどここに来る前も私って全然ハル君やルノさんカズハちゃんのこととか前起きてたことも忘れなかったな。
どういうことなんだろう? でもキリコっていい加減なとこもあるからよくわかんないな、普通に大丈夫だったってことなんだよね?
「梢様」
「あ、はい?」
「ご気分でも害されましたか? 私の部屋に来ても対して楽しくはないと思うので少々返事を躊躇してしまいまして」
「ううん、ただ考え事してただけ。 てかそんなことないよ、メイちゃんと一緒に居るの楽しいよ」
「…… そうですか身に余る言葉です。 ありがとうございます」
あ、ありゃ? 困らせちゃったかな??
こうして平和な毎日を送っていたが、ある日突然その平和な日は終わりを迎えることになった。
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