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プロローグ
「伊千佳さんのこと好きだって言ったら、どう思う？」
私、花田伊千佳に突然そんなことを言ってきたのは隣のクラスの地味目な男子だった。
去年の秋同じクラスに転校してきた村城唯人。
ボサボサの黒髪は前髪が長くて顔が見えづらい。
その上分厚い眼鏡まで掛けているものだから陰気な印象を受ける。
去年同じクラスだったとはいえ、まともに話したことはない。
せいぜい日直のときにノートなどを配るとき、「どーぞー」「ありがとー」と当たり障りのない言葉を交わしたくらい。
しかも今年は違うクラスになって、接点なんて美化委員会が同じってことだけ。
その委員会でたまたま一緒に道具を片付けに行って、たまたま帰り道で見ず知らずの生徒の告白現場に居合わせて、仕方なく二人そろって告白が終わるまで待機していたところだった。
回り道もないため図らずとも盗み聞きしてしまい、彼らの告白が成功して「おお！」と何だかこっちまで嬉しくなった。
ただ、その後二人はそのまま抱き合って去ってくれない。
どうしようかと途方に暮れていたところにこの告白だ。
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