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「なるほど。あいつは必要な人間なのか。早まらなくて良かったぞ。」
「じゃ、じゃあまだ無事なんですね!」
「あぁ。懇意にしている寺に預けてある。そうとわかれば近い内に誰かに迎えに行かせよう。そうだ、可成に頼もうか。」
「え?可成さっ……じゃなくて父上に?」
「お前も行くか?」
「えっ!?」
「利家は確かお前と同じくらいの年のはずだ。今から仲良くなっておけば今後色々と都合がいいのではないか?」
信長はそう言うと、おもむろに立ち上がった。蘭は急な申し出に戸惑いながらも頷くと言った。
「あの……信勝さんの事なんですけど……」
「あいつは納得して逝った。」
「……え?」
「最期に本音を聞かせてくれたのだ。だから昔の事はもう、俺の中ではなかった事になった。あいつとの思い出は今となっては何ていう事のない、何の意味もないものになってしまった。俺は……兄として道を間違えたのだろうか。なぁ?蘭丸よ。」
「そ、それは……」
振り返り様に強い視線で見つめられ、蘭は思わず顔を伏せた。
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