越後の龍

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――― 越後、上杉邸 「殿。言われた通りの物を持って参りました。これが桶狭間の戦場に落ちていた石で御座います。」 「うむ、ご苦労だった。」 「それと近くにこれもあったので持って参りました。」 「これは……槍か。ん?この家紋は確か今川の。」 そう言うとこの屋敷の主、上杉謙信は家来に持ってきてもらった石と槍を畳に並べて目を瞑った。おもむろに手を伸ばして石の方を触る。しばらくの沈黙。そして―― 「……なるほど。今川義元はやはり能力者だったか。『物体取り寄せ』とはまた便利な力だな。それにしてもあの松平元康が織田信長と手を組むとは流石に考えつかなかった。そしてこの足軽……一体何者だ?う~ん、この石ではこれ以上はわからぬな。それではこっちの槍を視るか。」 謙信は石から手を離して隣の槍に触れる。また先程と同じように目を瞑った。 .
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