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「良かった、ここだ。」
初めて来た店で、一度通り過ぎた場所。
一人で戻れるか不安だったが、無事に着いた。
シルバーがメインに使われている小物店。
「いらっしゃい。」
「あ、こんにちは!」
「ゆっくり見ていってくれ。」
今日のクズミもアクセサリーを付けていた。
しかも、エンリが武器に使っている鎖モチーフのものを。本人は無意識だろうけど。
なら、買うものは決まっている。
「もう持ってるかもしれないのが、怖いな。」
と、彷徨いていたミコトの目が一点に止まる。
「これ…!」
一目で気に入ったミコト。店員を呼び、包んでもらった。きっとクズミも持ってない、はずだ。
「エンリ様は……どうしよう。」
時刻は夕方18時。常世通り改札口。
「ミコ!!」
「!」
ベンチに座っていたミコトの側に、息を切らせたクズミが駆け寄った。
「クズミさん、急がなくて良かったんですよ!」
「いや、急ぐだろ。人待たせてんだぞ。」
「買った本を読んでましたし、待ち時間も苦じゃありませんでした。」
「ミコ……買った本、やべぇな。」
最近ではミコトの愛読書となっているあの本に負けず劣らずの厚さと重さ。彼女は慣れた様子で両足で挟み、支えながら読んでいた。
「図書室で返してたあの本だろ?何だ、買ったのか?」
「あ、これは違いますよ。黄泉駅のは『八大地獄網羅本』で、これは『転生経路網羅本』です!」
つまり、あの本の天国バージョンだ。
黄泉駅にはなかったから買えてよかったと笑うミコトの顔が眩しい。
「ミコのその社畜脳、オニイチャンに似てきたな…。」
「ありがとうございます!」
「褒めてねぇ。」
バタンッ
本を閉じたミコトは、傍らに置いた紙袋から取り出した物をクズミに渡した。
「お仕事、お疲れ様です。クズミさん。」
「……あぁ、サンキュ。」
差し出されたのは、
「何でタピオカ?」
「クズミさん、甘党ですしコーヒーは苦手そうですしココアはさっき飲んでましたから。総合的に考えました!」
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