謝罪

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謝罪

『次は黄泉駅、黄泉駅です。お出口は左側です。』 黄泉駅まで戻ってきた二人。 ドアが開いた電車からミコトが先に降り、クズミも続く。 「クズミさん、今日はありがとうございました。また明日からよろしくおねがいします。」 「おーう。…オレも楽しかったし。ミコから愛ある贈り物ももらっちまったし。」 「あ、愛は込めてないです!感謝は込めてますが!」 「っはは!冗談だって。」 ミコトは改札をくぐり、クズミに向き直る。 乗り換えがある彼とはここでお別れだ。 「じゃあ、また!」 「あぁ、また……!」 フッ ミコトの背後を見たクズミ。その顔に苦笑が浮かぶ。 「クズミさん?」 ボソッ 「律儀な奴だな……。」 「え?」 スッ ミコトの後ろを指すクズミの指。 辿って振り向いた先には、 「エンリ様?」 柱にもたれながら二人を見つめるエンリがいた。 「じゃ、オレ帰るわ。邪魔者みたいだしな。」 そう言ったクズミは、軽く手を振ったあとに2番線 へと続く階段を昇っていった。 「…ミコトさん。」 「はい!」 クズミが去ったのを見計らって、柱から身を離すエンリ。 「話があります。貴女の時間がある時で構いません。」 「待っていたってことは、急を要しますよね?私なら大丈夫です!」 「…ここでは難ですから、僕に付いてきて下さい。」 何だろう。気のせいかもしれないが。 エンリがいつもよりも弱々しい、いや、しおらしい。病み上がりだからだろうか。 そんなことを他の駅員がいる中言えるわけがなかったミコトは、歩き出したエンリの後ろを黙ってついていった。
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