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「……ねえ、ヴィレくん……」
うとうとしていると、ファイが喋りかけてきた。
その顔は、いつもとなにか違う。なにか、とろーんとしていて、頬が少し赤い…
「………なに……んむ゛?!」
その瞬間、ファイは俺のマフラーを無理やりおろしてキスしてきた。
一気に体温が上がり、爪が出てしまう。
長い、ながい口吻を終えたあと、ファイは俺をソファに押し倒した。
「ど………どしたの…ファイ………?」
ファイは何も言わず、もう1度俺に唇を重ねた。
唾液があとからあとから溢れてくる。
俺の中の抑えきれない本能が溢れそうになる。
こんなにも柔らかい、君の体を、この腕を、真っ赤に染めてしまいたい。
いやだ、嫌だよ。食べたくなんてない。
辛いよ、ファイ…!!!
やっと口を離したファイは、すごくぽわぽわしていた。
「うぃれぇ……ぼくを…たべて……」
その言葉を聞いた瞬間、俺の中の何かがぷつんと切れた。
ソファーから起き上がり、それからベッドにファイを押し倒した。
唾液がだらだらと溢れてきてファイのかわいい顔にぼたぼたと落ちる。
喉が鳴り、牙を剥いてしまう。
手から爪が完全に出てきて、シーツがばりばりと裂けていた。
食べたくない、食べたい。
ファイを抱きしめる。
この手の中の、柔らかくて温かいかたまりを、このままめちゃくちゃにしたい。
ぐちゃぐちゃの肉塊にしてしまいたい。食べたい。
嫌だよ。
「…ね、ヴィレ………ぼくを……たべて?」
食べたら、全てから開放される。
食肉本能と戦うことも、ファイを想いすぎて辛くなることも、何もなくなる。
何も、なくなる。
ファイも。
食べたくない。食べたい。
止まらない唾液と、柔らかい笑顔を浮かべているファイと、今にも溢れてしまいそうな本能と、理性と……
すべてがごちゃごちゃで、あたまがこんがらがってしまいそうだ。
ファイが俺の口元に触れた。
「ちょっとずつでいいから……ね、ぼくを……たべて。」
「めちゃくちゃにして……。」
今までにないほど牙が剥かれる。よだれが溢れ続ける。爪はもうベッド自体を切り裂いていた。
「ファ…グルルルルルルルル……ぁいグルルルルゥ…………!!!!」
唸り声が絡んでうまく喋れない。
嫌だ、嫌だ。目を固く瞑る。
「ファイ!!!!!!!!」
ファイが抱きついてきた。
「ヴィレくん、だいすきだよ。」
✲ ✲ ✲
「あ゛あっ!!!!!!」
起き上がると、そこは血みどろ… ではなかった。
隣にはファイがいて、すー、すー、と静かに寝息をたてていた。
俺の枕は、ぐしょぐしょに濡れていた。
「………………夢…?」
恐る恐るファイの頬に触れた。
いつもと同じ、柔らかい頬だ。
「ファイ………」
「…んむ…………」
俺の声に気づいたのか、ファイが目を覚ました。
「ん………ヴィレくん…おはよ……」
「…………おはよう。」
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