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「畜生……っ! あと少しだったのに」
「すまん、樹。俺が油断したせいだ」
「今言ってもしょうがないさ。嘉月らしくなかったのは確かだけどな」
「……すまん」
嘉月は、かわいそうなくらいしょんぼりしていた。
こんな珍しい様子をみられただけで、なんか得した気分になるな。
この状況で、俺って平和。
まぁ、真相がわかっちまえば、こうなるよな。
「それより……どうしよっか、嘉月? 扉は、開きそうにない」
「ずっとここにいるわけにはいかないし……紫乃さん……いや、紫乃が犯人だったんだな」
「いや、あれは、ブラフ」
「はったり?」
「ていうか、カマかけた。で、わかったことがある」
「なんだ」
「言えないな、今は」
「この期に及んでなにを」
訝し気な嘉月を無視して、提案する。
「まずは、ここを出ようよ。たぶん、どっかに隠し通路とかがあると思うし」
「……冷静だな」
「こういう時こそ、冷静になっちゃうんだよなー、俺の頭」
「それにしても……寒いな。飢える前に、凍死しそうだ」
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