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「風も歌声もこっちからだった。床の埃が、そこだけ薄かったし。よし、行ってみよう……といいたいけど、中は真っ暗だな。嘉月、ライターなんて持ってる?」
「あいにく煙草は嫌いなんでな」
「だよな。じゃ、部屋の中に、何かあるはず」
「蝋燭があるな。燭台もある」
「じゃ、マッチかチャッカマンもあるはずだ。探してくれ」
「人使いがあらいな……これか、マッチがある」
「つくかな」
「……大丈夫だろう。ほら、これでどうだ」
嘉月が擦ったマッチで蝋燭に火をつけた。それを燭台にさし、掲げてみせる。
「おお! 明るい! じゃさ、それもって、嘉月お先にどうぞ」
「俺からか?!」
「そう」
「いやいや、ここは見つけたお前から」
「なんだよ、怖いのかよ」
「そうじゃない。が、小柄な方が先がいいだろう」
「俺は嫌だよ。背後からでっかい嘉月がついてくるの」
「意味がわからん」
「とにかく、嘉月が先。燭台もって、はい、レッツゴー」
嘉月は相当不満そうな顔をしていたけれど、地下通路に入っていった。俺は室内を再確認してから、あとに続く。
「道が左右に分かれてる」
地下通路に入ってすぐ、嘉月が言った。
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