待ち伏せボーイとうんざりガール

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 何も謝罪から始まって謝罪で締めなくてもいいのにとは思ったけれど、これは普段の距離感によるものだと思うから特に文句は言えない。  部員同士で連絡先は一応交換しているけれど、私が先輩や後輩と日頃連絡を取り合うことは滅多になかった。  教室で過ごしている時同様、部活動でも、周囲とは必要最低限のコミュニケーションしか取らなかった。  というか、各々(おのおの)字と向き合うのがそもそもの活動内容なのだから、会話が少ないほうが正解だ。  それでも私が、部活では珍しく下の名前で呼ばれていたのは、顧問の先生も名字がたまたま宇佐美だったからだ。紛らわしいからという理由で、顧問の一声によって繭子呼びが採用された。  ヤツが来たのは文化祭の一日目だったけれど、後輩から私の受付担当シフトを聞き出して、なんと二日目にも来た。  個人情報をあっさり喋ってしまった後輩も後輩だけれど、今さら責めても仕方がない。  ヤツは何としても、感激した気持ちを私に直接伝えたかったらしい。これはヤツに後から聞いた話だ。
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