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というのも、結局ヤツは、いざ受付に座る私を目の前にしたら、何も言えなくなってしまったからだ。
だから、文化祭の時が初めましてだとヤツにいくら言われた所で、私に心当たりがないのは当然のことだった。
「何て言うか…二日目の時はギャップに圧倒されちゃったんだよね。一日目は、攻撃的すぎる字に圧倒されて、でもそれを書いた人があまりにも大人しそうな雰囲気の人だったから、別の意味でまた圧倒されて。文化祭の時は話しかけられなかったけど、でもどうしても宇佐美さんのことが忘れられなかったんだ」
繭子さんの字は整っているけれど、型にはまりすぎている所がある。いっそ、もっと力を抜いて、自由に書いてみるといい。
顧問の宇佐美先生からそんな指摘を受けた結果、出来上がったのが去年の文化祭でのあの作品だった。
ちょっと崩れすぎでは、ダイナミックすぎではと自分では思ったけれど、思いのほか周囲からは好評だった。
つまりその周囲の中に、不本意ながらヤツも含まれてくる。
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