待ち伏せボーイとうんざりガール

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 作品を褒められること自体は決して嫌ではなかったけれど、感激に留めておいてほしかった。何がどうなったら、つきまとうという発想に至るのか。  大体、大人しそうな雰囲気の女子なんて、ヤツみたいなタイプの男子からしたら興味の対象外なんじゃないのか。  少なくとも私は、ヤツみたいなタイプの男子のことを別世界の人間だと思っている。 「うさぴょーん」  聞き慣れないワードにぎょっとして、私は我に返った。  改札を通り抜け、電車に乗り込んだ後も離れようとしないヤツ。  二個分のアイスの木の棒と外袋が入ったレジ袋を、ぷらぷらと指先で弄んでいた。  この時間帯の電車は比較的空いているけれど、ヤツがいる時は絶対に私は座らない。そんなことをしたら、きっとヤツは当たり前のように隣に腰を下ろすに決まっているからだ。  警戒心を剥き出しにして、私はドア近くの手すりに摑まりながら、あくまで立つ。  残念ながらヤツも、ドアを挟んだ向かい側に、同じようにして立つ。隣に座られるよりは幾分(いくぶん)かマシだ。
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