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「…気持ち悪い呼び方しないで」
「いや、だって宇佐美さんって何回呼んでもずーっと窓の外見てるんだもん。最初の頃たまに呼んでたみたいに『繭子ちゃん』って言おうとしたけど、さすがに自粛したよ。宇佐美さん、俺のこと殺しかねない勢いだったし。あの時は視線で刺殺されるかと思ったよ」
「…勝手に犯罪者扱いしないで」
「大丈夫大丈夫、まだ犯してはいないから。未遂だから。ご覧の通り俺、ピンピンしてるでしょ」
似ている、と、車窓の外に広がる空を見ながらぼんやり思った。
ヤツの無遠慮な陽気さは、地上を燃やさんとばかりに容赦なく光を放っている真夏の太陽と似ている。これは決して誉め言葉ではない。
でも、ある意味ヤツの図太さは、生きていく上で、使いようによっては案外武器になるのかもしれないと思った。
これも褒めているわけではないけれど、でも、周囲の機嫌を窺うような人間より、ある程度図々しい人間のほうが結局は得をするような気がする。
やっぱり気に食わないな、と改めて思った。
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