4人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
私の日常は、元の平穏に戻った。
喜ばしいことのはずなのに、私の気持ちは何故だか晴れはしなかった。そんな自分に戸惑った。
とても複雑な心境なのだ。
学校から帰る道中、気付いたらヤツのことを考えている。
最後に会った時、確かに「また明日」と言っていた。けれどそれ以降、ヤツは現れなくなった。
単に気が変わっただけなのかもしれない。飽きただけなのかもしれない。でも、他に理由があるとしたら。
そんな風に、ヤツがいないにも拘らず、ヤツのことを考えている自分がいるのだ。
これもある意味、ヤツの執念によるものなのだろうか。執念というか、呪いというか。
ヤツが現れなくなり、そしてそのまま夏休みに突入した。
言うまでもなく、今年は受験の夏だった。ただひたすらに勉強をしていた。勉強自体は普段からやっていることではあるから、それに割く時間が増えたところで特に苦ではなかった。
そんな夏休みも気付いたら終わっていた。栄一にとって、夏休みの終わりは、文化祭の始まりを意味する。
最初のコメントを投稿しよう!