待ち伏せボーイとうんざりガール

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 引退はしているけれど、今年の書道部の展示の中に、例年通り私が書いたものも含まれている。引退前、最後に書いた作品だ。  非日常的な喧騒から少し離れた場所にある書道室で、今年も私はひっそりと受付に座っていた。  普段の部の活動からはもう離れていても、この受付担当シフトには三年生もしっかり組み込まれている。  引き戸が開かれ、顔を上げた。  そこにいた人物と、その立ち姿…急に入り込んできた情報を処理するのに、少し、手間取ってしまった。 「久しぶり、うさぴょん」  ヤツはいつものように手を上げた、と言いたいところだけど、いつもとは明らかに違った。  手のひらをほんの少し上に向けた、と言った方が正しい。そしてすぐにグリップ部分に掴まった。  ヤツは、松葉杖をついていた。そして右足には、包帯がぐるぐるに巻かれていた。
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