待ち伏せボーイとうんざりガール

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 言葉を発せない私に対し、ヤツはやっぱり勝手に話し始める。 「びっくりした?いや、あのね。ちょうど宇佐美さんと最後に会った時さ…バイバイした後、駅の階段降りる時にすっ転んで。ちょっと転び方が悪くて、これ、全治二ヶ月。折っちゃったのよ」  そう言って、ヤツは宙に浮いた白い足を軽く振った。 「二週間くらい入院もしてさ。いやー、参ったよ。部活引退した途端にこれだもん、いくらなんでもなまり過ぎだろって。完全に骨がくっつくまでは必要以上に出歩くなって言われてるんだけど、今日はどうしても来たくてさ。階段で骨折なんてマジでツいてないって思ってたけど、今日の俺はツいてるわ。だってここ来たらいきなり宇佐美さんに会えたんだもん」  今書道室にいるのは、私とヤツの二人だけ。  よいしょ、とヤツは方向転換をして、壁沿いにゆっくり歩き始めた。
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