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「もしもし、ユウジ?ああ、うん、今学校帰り」
我ながら何をやっているんだろうとは思うけれど、全てはヤツを避けるためだ。
こんな風に気軽に電話できるような相手、私にいるわけがない。当然ながら彼氏はいないし欲しいと思ったこともない。友達もいないに等しい。
でも、特に困ってはいなかった。
確かに周囲から一定の距離を取られている自覚はあったけれど、特別危害を加えられたりすることはない。
人に合わせたり群れたりすることに対して苦手意識があったから、むしろ単独行動のほうが気楽だった。
架空の人物・ユウジは、今日の英語の授業で長文読解の問題を解いた時に、その文章の中で出てきた名前だ。咄嗟にその名前を口走っていた。
演劇部員でも何でもないけれど、私のこの通話の演技はなかなか自然なのではと思った。
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