待ち伏せボーイとうんざりガール

3/22

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
 この世に存在しないユウジと話をしながら、駅の構内へと続く階段の下あたりに目をやる。   ヤツの姿が消えていた。  ヤツにしては諦めが早いなとは思ったけれど、早々に帰ってくれたのは好都合だった。  その時だった。背後から肩を急に叩かれたのは。  反射的に振り返り、そして反射的にスマホも耳から離してしまった。 「あーっ、やっぱり電話するフリだ」  大きな口でにかっと笑うヤツが、そこにはいた。  私は静かに混乱した。  ヤツは手にレジ袋を持っている。つまりこのコンビニから出てきたということだ。でも、少し前まで階段の下にいたはずだ。コンビニに入るためには、私の目の前を確実に通っている。  そんなに私は演技に夢中になってしまったのだろうか。危険人物が接近してきていたことに、全く気付かなかっただなんて。  そんな風に考えながらも、顔面上はあくまで平静を装う。何が起こっても基本的に動じない、取り乱したりしないことが私の得意技でもあった。  離しかけたスマホを、もう一度耳に当ててヤツをじっと睨み上げた。  身長が高すぎる所も、ヤツの気に食わない点の一つだ。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加