待ち伏せボーイとうんざりガール

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『谷津』を正しく発音するならば、アクセントの置き方は『靴』と同じだ。でも私は、『勝つ』と同じイントネーションで『ヤツ』と心の中で呼んでいる。  そんな、他校の生徒である『ヤツ』が、何故私を待ち伏せするようになったのか。何故最初から私の名前を知っていたのか。  正直それを説明することすらも億劫だけれど、致し方ない。今私の話を聞いてくれているあなたのためだ。きっかけから知ってもらっておいたほうが良いだろう。  私の記憶には全く残っていなかったけれど、ヤツ曰く、私と初めて会ったのは去年の栄一の文化祭らしい。ヤツは同じ部活の友達と、遊びに来ていたようだった。  ついこの間引退してしまったけれど、私は元々書道部に所属していた。  書道部は毎年、文化祭が開催される二日間、作品展示を行う。場所は書道室。  出入り口付近に長テーブルを置いて、簡易的な受付スペースを作り、部員が交代制で来場者への案内を行うのが二日間の仕事だった。
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