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手を引かれて無理やり足を前に出していると、自然と自分で走れるようになった。
2人して走って走って、2階の端にある教室に飛び込んで鍵をかけた。
「はぁ……はぁ……」
和樹が肩で呼吸を繰り返す。
そして耳をそばだてて、新が追いかけてこないのを確認するとその場に座り込んでしまった。
「ありがとう和樹」
呼吸が整ってからそう言うと、和樹は左右に首を振った。
そして自分の両手をジッと見つめる。
「どうしたの?」
「俺、新のこと殴っちまった」
「それは仕方ないことだよ」
あたしは慌てて和樹の両手を自分の両手で包み込んだ。
ここまで走ってきたのに、2人とも指先は冷たかった。
「あんな状況で、逃げてこられたのが奇跡だよ」
「でも……殴った感触がまるで生きた人間みたいだった」
和樹が震えながら言った。
「え?」
「あいつ、死んでるんだよな? 悪霊なんだよな? なのにどうしてあんな人間みたいな感触があったんだ?」
椅子から手に伝わってきた感触を思い出し、和樹は目を見開いて驚愕している。
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