生きている~紀一サイド~

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生きている~紀一サイド~

こんなの嘘だ。 あり得ない。 目の前で千秋が殺されて、俺の頭の中は真っ白になった。 本当に何も考えられなかった。 ただみんなが逃げ出したから、遅れを取らないように走り出しただけだ。 走っている間もずっとなにも考えられないままだった。 足が動いていることが奇跡だと思った。 気がつけば職員室の前まで来ていて、歩調を緩めた時千秋の顔を思い出した。 包丁のようなもので刺された千秋が目を丸くして愕然としていた。 そしてそれが引き抜かれた時、千秋の体から沢山の血があふれ出したんだ。 それは今まで見たことのない血の量だった。 暗闇の中だったのに、鮮明に思い出すことができる。 千秋は薄着で、血が肌にまとわりつきながら流れていったんだ。 健康的に焼けた肌がどんどん生気を失っていく。 あのまま放置して逃げてきてしまったけれど、千秋が無事だとはどうしても思えなかった。 今すぐ引き返して確認したい。 助けられるのなら助けたい。 そんな気持ちはあるのもも、1人で行動することなんてできなかった。 相手は死んだはずの新だ。
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