生きている~紀一サイド~

2/12
前へ
/154ページ
次へ
きっと神出鬼没で、急に襲いかかってくるに違いない。 そう考えると震えあがった。 職員室では昇降口の鍵を手に入れることができた。 鍵は結子がしっかりと握りしめている。 しかし、笑が電話を確認してみるとどこにもつながらないことがわかった。 俺も試しに他の電話の受話器を持ち上げてみたけれど、いつら番号を押しても呼び出し音が聞こえなかった。 「悪霊になったのかもしれない」 みんなが議論する中、俺は呟いた。 小学生のころ、こういう映画を見たことがあったのだ。 学生ばかり数人で学校内に閉じ込められて、自殺した友人が悪霊となって追いかけてくる映画だ。 俺は見たくないと言ったのに、姉貴が『男ならこのくらい見なさいよ』と言って無理やり見せてきたんだ。 その時の映像は今でもトラウマになっている。 だから、今この状況が誰よりも怖かった。 「悪霊?」 結子が首をかしげて聞き返してきた。 俺は頷く。 「あぁ。だって、新は事故死だったろ? なにもわからない間に事故に遭って死んじまったんだ。その魂が悪霊になって今も残っててもおかしくないだろ?」
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加