生きている~紀一サイド~

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だけど恐怖で思うように走れない。 机や椅子に何度もぶつかり、とうとう床に膝をついてしまった。 赤ん坊がハイハイするように移動する。 顔は涙でグチャグチャになって、もう職員室の出口がどこなのかも見えなくなった。 そんなとき、白いパーテーションが見えて咄嗟にそこに身を隠した。 そこは簡易的な給湯室になっていて、先生たちが普段飲んでいるのであろう、コーヒーの匂いがしている。 「助けてくれ!」 幹生の悲鳴に驚いて身を縮める。 ここからじゃなにがどうなっているのかわからない。 だけど新がまだそこにいることだけは確かだった。 出ていくことなんてできない。 ボソボソと、幹生の震える声が聞こえてくる。 恐怖で声が出ないのだとわかった。 俺も、怖くて出ていくことができなかった。 普段荒い言葉遣いをしているのは、自分の弱さを隠すため。 そんなの自分でもわかっていたし、きっとみんなも気がついている。 幹生だって、きっとわかってくれる! ギュッと目を閉じたとき、幹生のうめき声が聞こえてきた。 それは嫌な声だった。
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