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生命が最後に絞り出すような声。
俺の背筋は寒くなり、吐き気がこみ上げてくる。
手で口を押さえてどうにかやり過ごすと、足音が遠ざかっていくのが聞こえてきた。
出ていったか……?
それでもしばらくその場から動くことができなかった。
新が戻ってくるかもしれないと思うと、どうしても勇気がでなかった。
他のみんなはどうしただろう?
どこに逃げたんだろう?
1人でいることが途端に心細く感じられた。
俺1人で新に立ち向かうことなんてできない。
できればみんなと合流したい。
その思いから、どうにか恐怖心を押し込めてパーテーションの奥から顔を出した。
職員室の中は静かで、なんの物音も聞こえてこない。
薄闇の中周囲を確認してみるが、新の姿はないようだ。
やっと安心して立ちあがり、パーテーションから出てきた。
「幹生、いるのか?」
小さな声で話しかける。
幹生からの返事はない。
新が入ってきた方のドアへと足を進めると、ツンッと鼻腔を刺激する鉄の匂いが漂ってきて、足を止めた。
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