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そう思って椅子に掛けられている膝かけに視線を移した。
せめてなにかかけてやろう。
そう思って手を伸ばしかけたが、隣の応接室からガタンッと物音が聞こえてきて手をひっこめていた。
な、なんだ今の音は!?
突然の異音に心臓がひとつ大きく跳ねあがる。
血液が沸騰したように熱く、それなのに全身が冷えていく感覚がした。
耳を澄ませてみても他に物音は聞こえてこない。
今の音は確かに応接室からだった。
確認しに行った方がいいか?
心の中ではそう思うものの、実際は恐怖で足が一歩も動かなくなっていた。
出口へ向けて歩こうとすると、俺の両足はコンクリートで固められたように固くなる。
「ちっ」
強がりで舌打ちをする。
情けなさがこみ上げてきたが、仕方ない。
俺は体の向きを変えて再びパーテーションの奥へと逃げたのだった。
☆☆☆
それから20分ほど経過しただろうか?
廊下が騒がしくなり、俺は耳をそばだてていた。
すぐ隣の応接室のドアが開閉する音が聞こえてくる。
そして聞こえてきたのは仲間たちの声だった。
この声は結子と和樹。
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