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後ろから城下麻由子(シロシタ マユコ)にそう声をかけられて、あたしは肩をすくめた。
バスを降りてここまで歩く間に学校名が書かれた看板があったのだけれど、みんなはそれに気が付いていないようだ。
木製の看板は半分が腐って落ち、マジックで書かれていた文字も霞んでほとんど見えなかった。
でも、あたしはその学校に聞き覚えがあった。
「感染病患者の子供たちがここに隔離されてたんだよ……」
あたしは誰にも聞こえないよう、そう呟いたのだった。
☆☆☆
建物の中は思っていた以上に綺麗だった。
さすがに、毎年映画部の1年生が合宿に来ているだけある。
「まずはみんなで大掃除だ!」
浅野先生の言葉を合図に、男女3人ずつに分かれて掃除を始める。
「埃がすごいな」
岩岡俊和(イワオカ トシカズ)が埃に苦戦し、咳き込んでいる。
それを見てすぐに祐里がかけていった。
「これ、使って」
と、自分のハンカチを差し出している。
「あぁ、ありがとう」
俊和は遠慮がちにそう言い、祐里のハンカチを自分の口に押し当てた。
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