想像の旅

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

想像の旅

 平日の朝、自転車通勤をしている間に欠かさずやることがある。  名付けて『想像の旅』  朝起きて、バタバタするのも嫌いだし、急かされるのも嫌いなわたしは、いつも少し余裕を持って仕事場に向かう。  それこそ鼻歌が歌えるくらいの少しの余裕。  早朝の通勤時に、今日は良い天気だな〜 とか、今日は風が気持ち良いな〜 とか脳天気に考えている人の方が、もしかすると珍しいかもしれない。(いつも何台もの自転車が、わたしの横を爆走していく。) だけど、それくらいの気持ちの余裕がどうしても欲しい。 なぜなら、『想像の旅』がしたいからだ。  自転車をゆっくり目に漕ぎながら、わたしは周りを見渡す。  あそこにいる小学生たちは、夏休み明けの学校で憂鬱なんだろうな、、いや、案外久々に友達に会えて嬉しかったりするかもしれない。子供は子供で学校社会で生きていくのは大変なんだっけな〜。でももし一日だけ、今目の前にいるあの小学生と入れ替わったら、わたしはどんな風に学校生活を過ごそうか、、、あの子はどんな気分なんだろう、、             とか、  あ、向こうで子供さんと散歩しているママさんがいる。晴れた日の朝の散歩って心地よいから、きっとあの小さい子もお母さんも穏やかな時間を過ごしてるんだろうな〜。いやでもやっぱり、あんなに穏やかそうなママさんでも、お家では子育てバタバタで大変なんだろうな、、 とか、  あのゲートボールしてるおじいちゃんたち、朝から健康的で良い時間を過してらっしゃるな〜。羨ましい。このままわたしも仕事をサボって公園でのんびり過ごしたいな、、ブランコとか乗ったら楽しそう、、ああでも、あんなに楽しそうな方たちも、きっと色々と悩み事とか抱えてたりするんだろうな、、 とか、とにかく色んなことを思いつく限り想像する。これはもはや妄想?現実逃避?いいや、『想像の旅』!!  想像している間は、なんだか他の人の人生を少しだけ味わえた気がして、ちょっと新鮮な気分になる。  あ、仕事場に着いた。  今日も一日がんばるか。  
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!