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その日の夜、俺は酒を片手に漫画を読みながらいつもより夜更かしをしていた。
その時だった。
ドンドンドン
あの音がした。
時計を見ると昨日と同じ位の時間。
(やれやれ、お隣さんは今日も荒れているようだ。)
呆れながらも、俺は少しの違和感を覚えた。
その音は、隣に面する壁からというよりは、全ての壁、床、天井、全方向から響いて来ているように思えた。
それはまるで、全体が振動する箱の中にいるかのような気分だった。
(まあ、この建物もだいぶ古いし、振動が柱という柱に伝わってしまうのだろう。)
俺はまた頭から布団を被ってそのまま寝てしまった。
それから毎日、決まった時間にあの音はした。
もともと図太い神経の持ち主であった俺は、すぐにその騒音にも慣れてしまい、一度目が覚めてもまたすぐに眠れるようになるまでになった。
しかし、当の隣人はみるみるうちにやつれていった。
もともと隣人は、朝は俺より先に家を出て行くタイプだったが、最近は良く出て行くタイミングが被り、俺はその様子を目の当たりにしていた。
(毎日毎日、夜中に暴れていては、寝不足にもなるしやはり身体には良くないだろうな、、、)
俺は段々と隣人のことを心配するようになった。
しかし、隣人は俺の心配なんてお構い無しに、目が合うと俺のことをギロリと睨んで来るようなった。勿論挨拶だってありゃしない。
きっとあまりのストレスに、誰にでも怒りをぶつけるようになってしまったのだろう。
俺もあまり関わらないようにしようと思った。
しかし、ある日の朝、再びドアの前で出会した隣人はふらりとよろけて遂にそのまま倒れてしまった。
「大丈夫ですか!?」
俺は慌てて駆け寄ったが、隣人は俺を冷たく突き放した。
「う、うるさい!!」
隣人の目は血走り、顔は真っ赤になっていた。まるで俺の事が憎くて仕方が無いと言った様子だった。
「お前のせいだろうが!!」
そして隣人は怒りのままにまくしたてた。
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